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短い夏に想う

 

コロナ禍の夏。子供たちは例年の半分ほどの夏休みをプールもなければラジオ体操もない、花火大会やお祭りもない、ナイナイの異例尽くしで過ごしました。さらに今年は別荘状態におかれていた我が家に必要最低限の家財道具と着替えだけを持ち込み滞在。テレビもWi-Fiもない、空間と時間だけがたっぷりとある生活は、モノに囲まれ雑多な仕事に追われていたこれまでの時間を遠い昔の出来事のように追いやります。

空いた時間を何に使うかと聞かれた時は真っ先に「家の掃除!」と答え、自分ひとりの自分だけの時間を持つことに罪悪感を持っていた頃もありましたが、その頃とはまるで別人の私が今自分の時間を使ってやっている事の一つに読書があります。

コロナ自粛中も読みふけっていた五味川順平氏の長編「戦争と人間」に続き、「人間の条件」を読み終えた所です。

歴史の教科書や学校では決して教わらない日本の歴史。戦争体験者だからこそ語れる真実がこの本には書かれています。

歴史は繰り返すと言います。しかしながら人生と同様に繰り返しのループから脱却するための今世であるならば、日本の歴史、世界の歴史もまた何らかの新たな選択をできるはずだと願わずにはいられません。今の世の中がまるであの第二次大戦前のきな臭さが漂うと囁かれている時だからこそ、あの日あの時、国はそして人は何を想い、どう生きたのか、知りたいと思うのです。

日本の歴史を正しく知りたいと思っても、真実が明らかにされていないばかりか、戦後は特に様々な反日プロパガンダによって歪められているし、見事な自虐史観に浸かりきっている私たちは、誰かが何らかの意図をもって都合良く解釈した「史実」に対しあまりにも無関心です。

ぼーっとしてるとか、平和ボケとか言われても尚、それが日本の良い所と云わんばかりに危機感を持っている人の方が変人扱いです。

戦後75年、当時を知る生証人は僅かです。今生きている人間の殆どが戦争を知りません。祖父は海軍として出兵し南洋から帰還しましたが、戦争中の事はやはり多くを語らずに逝きました。祖父の弟は陸軍でフィリピンにて28歳で戦死しています。戦後のGHQ統治下では戦争について語ってはいけない空気を作られ、敗戦国としての見事な自虐史観を植え付けられました。戦勝国に対しては二度と歯向かってはいけない、まさに勝てば官軍なのでしょう。

挙国一致で戦争を行い、あれほど日本は勝つと信じて疑わなかった軍国主義を育て大衆を扇動していたのは何だったのか。

否応なしに戦争へと導かれていった当時の異様な空気感を、五味川先生の著書を読んで初めて理解できたと思います。そして本当に気味が悪いほど今の世界情勢とリンクしているのです。当時と今とでは価値観が大きく変わった点は沢山あります。しかし、良くも悪くも日本人の精神性が世界から危険視もされてきたし、一目置かれる所もあった、という事実は、戦争という人類史を振り返る時に、無視できない観点ではないかと思うのです。

権力に対する日本人の姿勢は戦時中と何ら変わらないと感じるし、何というか、その他大勢の意思を汲んで行動してしまう勘の良さというか精神性も、一方では無言の圧力ともなる恐ろしい集合無意識を助長させていると感じるときもあります。

新型のウイルスよりも、罹患した時の世間の目が怖いなんて、よく考えたら馬鹿げていると思いますが、実際はどうでしょうか。戦争で死ぬより非国民と言われる方が辛いとか。何だか似てますよね。

大義名分と正義の名のもと個人の意思や権利などが突如として無くなるのが戦争です。

誰一人として避けることの出来ない運命へと放り込まれるのが戦争です。

人類が地球に誕生してから戦争が途絶えた時間は1秒もないと言います。

あの夏、原爆を落とすボタンを押したのはパイロットでも、投下を指示した敵国の誰かでもなく、戦争を後押しした人類一人ひとりの目に見えない大きな集合無意識だったのではないかと思えるのです。宇宙から見ればそれが人類全員が選択した決断の一つに過ぎないと。

以下、五味川先生の著書より抜粋

「神は退屈だった」

「彼らは死ぬ義務を了解して死んだのではない」

「和平はお互いの国の人が妨害しない事で成立する」

「戦争の圏外に立つには満州を手放す事。しかしそれでは日清・日露以降の意味がなくなる」

「維持能力を超えた戦線を維持する事は国防上必要か?」

「日本軍への疑いを持つことは自分自身を険しい道へおいやることになる」

 

戦争という一言では語りつくせぬ人類史がまた一つの時代を上書きしていくのを私たちは傍観していられるのか。私たちが決断する事の一つ一つが、例え小さな決断であっても大きな責任があると、改めて自覚させてくれた夏でした。

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